街のあちこちに、クリスマスケーキのポスターが貼り出されている。
目にする度、本気でかぶりつきたくなる。
グッと押さえて、通り過ぎる。
心の中で、ブツブツと呪文のごとく唱えながら。
「もうすぐ、グリンデルワルド。もうすぐ、グリ・・・・」
毎年クリスマスには、成田赤十字病院近くの「グリンデルワルド」さんのケーキを食べるのが、決まりだ。
普段なら、迷って決められない程色とりどりのケーキが並ぶショーケースも、クリスマスの前後は数種があるだけで、後は全部生クリームと生チョコのデコレーションケーキが、箱に入って積まれている。
他店のように、ブッシュ・ド・ノエルなど数種から好きなものを買うということは、残念ながら出来ない。
それ程、「生デコレーション」に自信があるのだと思う。
と同時に、人気店ゆえ、そこまで「手が回らない」ということもあるだろう。
クリスマスに限らず私は、バタークリームのケーキが、無性に食べたくなる時がある。
グリンデルワルドさんのパティシエによると、それは私だけではないようだ。
「他のお客さんにも言われた」、と前置きをしてから、嘆くようにおっしゃる。
「今こんなに美味しいクリームがあるのに、どうして?」と。
どうしてと言われると、「懐かしいから」と言うしかない。
だって、子供の頃「ケーキ」というと、バタークリームだった。
毎年クリスマスになると、近所のお菓子屋さんからもらってきたチラシを見て、親におねだりする。
バタークリームのデコレーションが大半を占めていたと思うが、よく見れば下の方にちょこっと、「生クリーム」というワードがあった気がする。
しかし母が、予算内のケーキを指差す中にそれはいつも、絶対に入ってこなかった。
ので、子供の私にしてみれば、存在してないようなもの。
たいして気にすることなく、バタークリームのケーキに○を付けた注文書を、スキップで提出しに行った。
小学校の高学年だったと思う。
級友から、「不二家」という存在を知らされる。
バスの終点の街に、あった。
チラリと覗いて、衝撃を受ける。
なんと、スポンジの間に、イチゴが丸ごと挟まっているではないか!
それが、ケーキ全体の厚みを増し、たっぷり絞り出された生クリームと共に、圧倒的な迫力で迫って来た。
それと比べると、いつも食べているバタークリームのケーキが、膨らまなかったパンケーキのように寂しいものに感じてしまった。
だってそちらのスポンジに挟まっているのは、すっぱいジャムだけ。
クリームの塗り方も、左官屋さんのように薄く、平面的。
あっちを、食べてみたいっ!
いろいろ融通してくれていた、馴染のお店を裏切れないという事情と、なによりお値段が高い。
ということで最初母から、剣もほろろに、跳ね付けられる。
しかし、しつこくしつこくリクエストしていたら、ある年とうとう許してくれた。
いつもお菓子屋さんに注文書を持っていくのは私なのに、今年は出さない・・・・。
子供ながらにも後ろめたい思いをしつつ、うきうきと不二屋へ。
初めて箱から出し、
切って、
食べる。
一つ一つが、いちいちカルチャーショック。
以降、バタークリームに戻ることはなかった。
もしかして、今はないのかな?
コンビニに置いてあったカタログをもらい、めくってみる。
最後のページに、「ちょこん」とあった。
「おぉっ!これこれ、これだよっ!!」
白と、チョコの2種類!
どっちにするか、毎年迷ったんだよなぁ~~!!
挟まっているのが、杏ジャムなのも同じで、嬉しくなる。
懐かしぃな~~っ!!
買っちゃおうかなぁ~~っ!!!
思わず、ハイになる。
お値段も、6号で1,900円という安さで、生クリームよりもグンとお財布に優しい。
あの時の母の頑固さが、一瞬で理解できた。
しかし、食べるの私一人だけだったらどうしよう・・・・?
なんで、せめて5号がないのか。
あっ!
カットして、冷凍保存という手もあるな!
一人ケーキのカタログを握りしめ、笑ったり悩んだりを繰り返していると、家族が怯え、遠ざかっていく。
私位の年代なら、バタークリームへの郷愁を持つ人が少なからずいる気がするが、どうなのだろう?
「バタークリームケーキを食べる会」
作ろうかな?
と、本気で考える。
そのときは、グリンデルドさんに何と言われようが、強引にお願いするつもりだ。
ということで、会員大募集中。
みんなで地元のケーキ屋さんにバンバンリクエストして、バタークリーム復活に、ご協力をお願いします。