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セカンドインパクト

電話の向こうの母は、いつになく神妙だった。

どうやら、かかりつけのお医者さんからの、強い指示があったらしい。

「先生がね、病院の売店でしか扱っていないっていうのよ・・・。

悪いけど、行くついでがあったら買ってきて頂戴。」

タイミングよく、明日行こうと思っていたので快諾。

「それで、何を買ってくればいいの?」

「男のストッキング。」

「へっ?!」

聞き間違いかと思って、確認する。

すると母は、かみ締めるようにやはり

「男のストッキング!」

と言うではないか。

とっさに思ったのは、「変態」。

**************************

それはまだ制服を着て、バス通学していたときのこと。

通路を挟んだ隣の席に、後から乗ってきた人が腰をかけた。

(ん?)

視界の端に映ったのは、スラリと伸びた足。

(すっごいミニスカートのお姉さん来たーっ!)

と思って、視線を移す。

(えええぇぇぇっ!!!)

なんと、黒い網タイツの所々から、剛毛がはみ出している。

恐る恐るお顔を確認させてもらうとそこには、ざんばら髪のおじさんの顔が・・・。

世間の常識を破りまくりのコーディネートに衝撃を受け、うつむく。

(世の中には・・・いろんな人がいるんだな・・・・・。)

と、いやが上でも思い知らされた、私にとってのファーストインパクトだった。

*********************

・・・・・・・・・・・・。

という光景が頭の中を駆け巡り、つい母を置き去りに。

娘の無音状態に痺れを切らし母は、

「私にも、詳しいことは分からないのよ。

とにかく先生がそうおっしゃるんだから、売店の方に聞けば分かるはずだから!」

とまくし立て、電話を切ってしまった。

翌日、やや緊張気味に売店の前に立つ。

中に入ると、医療品のコーナーが奥にある。

レジの人につかつかと歩み寄り、ちょっと戸惑いながら口を開く。

「あの・・・・。

男性用のストッキングって、ありますか?」

母の言葉そのままに言うのはさすがにはばかられ、「男」を「男性」と言い換える。

「はい、ありますよ。」

(えっ?!)

大和ハウスの役所さん並みのテンションで、内心あんぐり。

「お医者様からの支持ですか?」

「は、はい。」

「いろいろなタイプがあるんですが・・・。」

と、言いながら、カタログを広げて見せてくれる。

見ると大きな字で

「弾性ストッキング」。

(あぁ・・・・・

こっちね・・・・・・・・。)

母の言うことには、油断できない。

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