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多勢 に 無勢

知人さんに頼まれて、気軽に引き受けた。

それが、こんなに大変だとは、思わずに。

私が、100円ショップに行くと知ると、ついでに印鑑を買ってきてと言う。

了解。

自分の用事をひとまず置いて、人様からの頼まれごとを片付けよう。

そう思って、冷蔵庫のような、印鑑の集合住宅に向かう。

ぐりぐりと回して、お目当ての名字を見つける。

売り切れてるー。

引き受けた以上、手ぶらで帰るわけにもいかず、他のお店へ。

あれっ?!ここもだ・・・・。

そして、3軒目に。

それにしても、100円ショップがあちこちにあって、助かるなー。

と、改めて思う。

今度こそと意気込んで、ぐりぐり。

えーー!!

さすが、鈴木さん。

どの集合住宅にも、2本分のお部屋があるのに、見事に全員お留守だ。

鈴木一族のパワーを、まざまざと思い知らされた。

それとも私、鈴木さんに、嫌われちゃったのかな?

あまりの不運続きに、ちょっと後ろ向きな気持ちになる。

それにしても鈴木さんって、印鑑を買うのに、いつもこんなに苦労してるのかな?

それを知ってて人に頼む程、知人さんは、意地悪ではない。

たまたま、か。

仕方ない、携帯で了承を取って、最後のお店に予約をした。

予約票に、名前と電話番号を書くように指示される。

いつもの癖で、自分の名を書いてしまったら、店員さんが、不審の眼差し。

慌てて、「鈴木」と、書き直す。

ついでに、母に頼まれた時計の電池交換も、済ませよう。

そのお店からすぐの、大竹時計店に入る。

店内で待つと、気を遣わせてしまうので、「他を見てきます」とお店を後にする。

大竹時計店のすぐ横に、ずっと気になっていた文房具屋さんがある。

昔ながらの佇まいに、ほの暗い店内。

絶対、昭和の香りがするに違いないと、信号待ちで目にする度、思っていた。

いい機会だから、入ってみよう!

こんにちはー。とドアをくぐると、奥から店主さんが出てきてくれる。

予想通りの部分と、意外な面が同居した、何とも言えない空間だった。

筆記具などは、最新のものがぎっしり並んでいて、驚くほど品揃えが豊富だ。

それとは対照的に、ちょっと埃がかぶっていそうな、古いレターセットなどが混じっているところは、「レトロ」で予想通り。

文房具フェチゆえ、ただぶらぶら見たいだけだ。

が、わざわざ出てきてもらったのだから、何か買わないと悪い。

ふと隅をみると、印鑑タワーがある。

近づくと、100円ショップのそれとは違う、クラッシックで重厚な造り。

「象牙の認印」などという文字も見える。

ややきしむタワーを回し、鈴木家の表札を探す。

あ、やっぱりない。

空家になっている。

が、なんと、隣のもう一軒には、住民らしき姿が。

引っ張り出して、丹念に確かめる。

さっき、「鈴本さん」に、騙されそうになったからだ。

店主さんにも「これ、鈴木ですよね?」と確認してしまうほど、慎重になっていた。

鈴木さんに間違いないと太鼓判をもらってから、恐る恐る値段を聞く。

「105円の印鑑」を頼まれたのだということを、思い出したからだ。

もし本当に象牙だったら・・・。

店主さんはあっさり、「105円です。」

おぉ!

重厚なマンションの「鈴木さん」も、100円プラス税?!

やっと「鈴木さん」に出会えた喜びと、すごく得した気分を胸に、時計店に引き返す。

無事母の時計を受け取ったが、まだ大事な仕事が残っている。

先ほどお願いした印鑑の予約を、断らなければならない。

注文時にヘマをしたから、取りやめたのね。

などと、あらぬ疑いを掛けられたりして。

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