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グリーンフーズ

我が家には今、珍しくお客さんが来ている。

お客さんといっても、特におもてなしの必要はない。

食べたい時に食べ、眠くなったら寝ているので、こちらも気軽だ。

お好みもシンプルなベジタリアン。

そのせいか、顔も体も、緑色だ。

それは、クレマチスの蕾に隠れていた、モンシロチョウの、幼虫くん。

まだ一度も花を見たことがない、植えたばかりのクレマチス。

蕾がだいぶ膨らんで、「もう咲くな」と楽しみにしていた。

しかし、ぽっかりと、穴が空いている。

あっ、虫に食われてる!

食べた主の姿はない。

むむ。

ま、たくさんあるから、いいや。と、珍しく寛大な気持ちになる。

数日後、、父の仏壇にと、開きかけた蕾を選んで切る。

その中の一つが、やはり食べられた跡があったので、家の花瓶に差しておいた。

そして、開いた花の中に、不審なシルエット。

見ると、青虫だった。

おぉ、君だったのか―。

正体がチョウだと、途端に優しくなる。

たんと、お食べ。

外に出して、鳥に食べられては大変と、そのままにしておく。

5枚の花びらのうち、2枚をたちまち食べつくす。

すごい食欲だねぇ。

ひたすら食べ続けている幼虫くんを見ていて、素朴な疑問が湧く。

寝たりするのかな?

深夜、まだ食事を続けている幼虫くんを残し、布団に入る。

明け方見ると、葉柄にぶら下がって、じっとしている。

おぉ、睡眠中だ。

目、閉じてるのかな?

虫眼鏡を探しに行く。

そう言えば幼虫くん、瞼ないじゃんと、途中で気付く。

じっとして、短い足をからめ、公園の鉄棒で子供がよくやる、「豚の丸焼き」の恰好をしている。

から、たぶん寝ているのだと思う。

ちょこちょこ見ていると、喰っちゃ寝状態のようだ。

2・3時間おきに、おっぱいを飲んで寝る、人間の赤ちゃんと一緒。

側にバラの花や、他のクレマチスもあるのに、くっついてきた花ばかり食べている。

花に飽きたのか、今度は葉ばかり食べていたりと、見ていて微笑ましい。

そういえば、父が亡くなって暫くして、突然家の中に、チョウチョが出現して驚いたことがある。

もしや、父?

と思って、そっと窓の外に出した。

が、何のことはない。

無農薬野菜にくっついてきた青虫がさなぎになり、かえったのだった。

主がいなくなった半透明の抜け殻が、ポツンと残っていたから分かった。

君は、いつさなぎになるの?

心の中で問いかける。

ピカピカの顔が、花びらの上を行ったり来たりすると、そのとおりの形に削れていく。

生きるためのひたむきさに、見ている私も引き込まれて、動けなくなる。

全部食べたら、お代りあげるからね。

人だと面倒だが、こういうお客さんなら、大歓迎だ。

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