不意に鳴った電話の向こうの声は、
母だった。
「シチューを沢山煮たから、
取りにいらっしゃいな。」
「ははーっ!」
早速駆けつけると、
大鍋をかき混ぜながら
にっこりと振り向く母。
「もう少しだから、
お茶でも飲みながら待っててね。」
「はいっ!有難うございますっ!」
二人分のコーヒーを淹れ
コタツに足を入れる。
母が運んできたお茶菓子に舌鼓を打ちながら、
「そういえば・・」と
話し出す。
「この頃もらってばかりで・・・。
先日のキジ鍋も大変美味しかったです!」
と遅まきながら、お礼を言う。
ここ数カ月は、
鴨に始まってキジそして今回のシチューと、
母の煮込み料理を味わう機会が多い。
「いいのよ。
知り合いの方に材料を沢山頂いたから作ったのだもの。」
「成程~。
とすると今回もお野菜などを分けて頂いたのですか?」
「いいえ、
ししを頂いたのよ。」
(しし・・・・?)
「えと・・・もしや
イノシシですか?」
「ええ。」
「鴨、キジ、イノシシと。
もしや全部、狩猟をなさるというお知り合いの方からですか?」
「そうなの。」
野生いっぱいの印旛地区。
近郊には、射撃練習場もある環境で
狩猟をたしなむグループも存在する地域ゆえの恩恵だった。
(有り難や、有り難や。)
と心の中で手を合わせていると、
母が話し出す。
「この間鴨を初めて料理して
改めて思ったんだけど、
キジは楽ねぇ。」
「へっ?何がでしょう?」
「鴨はね、羽根をむしっても根元に羽毛が残るのよ~。」
「あぁ、お布団に入っている『ダウン』ってやつですね。」
「そうそう。」
「その点キジは、むしるともうキレイなチキン肌なの。」
「そ、そうなのですか・・・・。」
スプラッタが苦手なので、
話題を変えねばと慌てて思いを巡らす。
が、遅し。
「だから鴨の時は、表面を炙って毛を焼かないといけなかったのよ。」
「(ひぇ~~)そ、そうだったのですか~。」
「今回のイノシシはね・・・・。」
「は、母上!
そろそろお鍋の様子は?」
「あ、そうだったわ。」
よいしょと腰を上げて台所へ向かう母の後ろ姿に、
ホッ。
母よ
どこまで野生なのだ。